「クリネックス®」・「スコッティ®」フェイシャルティシューやトイレットロールなどの家庭紙をはじめ、ヘルスケア用品、業務用品などの製造販売を行う日本製紙クレシア株式会社(以下:クレシア)の第23回JAPANドラッグストアショー出展において、博展は企画・デザインから施工までトータルサポートいたしました。

ドラッグストア業界の健康・美容用品メーカーが一堂に会するアジア最大級の本展示会には、企業をはじめ多くの消費者が来場します。クレシアは本出展において、来場者に向けて「クレシア サステナビリティ」を伝えるとともに、ブースの装飾においても全てをリユースもしくは再資源化することにより「ゼロ・ウェイスト」の設計を実現しました。

今回は、クレシア齊藤さん、荒川さんとともに、博展 プロデューサー繁田さん、サーキュラーデザインルーム 鈴木さん、デザイナー 福地さんが本プロジェクトの背景を語ります。

左から 博展 サーキュラーデザインルーム 鈴木さん、デザイナー 福地さん、プロデューサー繁田さん、クレシア 荒川さん、齊藤さん

Index

商品だけではないクレシアの価値を知っていただきたかったんです。

– 2023年のJAPANドラッグストアショーは例年に比べ出展内容が大きく異なったとか。

荒川:はい。JAPANドラッグストアショーには毎年出展していますが、数年前からクレシアのサステナビリティを伝えるコンセプトで出展しているんです。消費者の身近にあるティシューやトイレットロールといった我々の商品は、「すべて紙からできているから環境に優しい」ということを“クレシア サステナビリティ”として来場者に改めてご認識いただきつつ、業務用品に関してもどのようにSDGsに貢献しているのか消費者に理解してもらいたかったんです。

左から、クレシア 荒川さん、齊藤さん

齊藤:私たちはメーカーなので、これまでの展示会では商品を訴求する展示ブースをつくっていました。ただ、今回は商品メインではなく、“クレシア サステナビリティ”のコンセプトメッセージをどう打ち出していくか悩んでいました。

また、商品だけでなく、我々がどのようにリサイクルを行っているのか、そして消費者がどのようにリサイクル活動に参加していけばもっと環境に優しくなるのかを啓発することで、商品だけではないクレシアの価値を皆さんに感じていただきたいという想いがありました。 

クレシア 齊藤さん

もともと博展さんは、日本製紙の展示会でサステナビリティの取り組みをサポートされていたり、サステナブル・ブランド国際会議を主催していたりと、サステナビリティに関して強みがあることを知っていました。また、今回のように商品を見せることが目的ではなく、コンセプトを伝える目的で出展することを考えたときに、自ずと博展さんが思い浮かんだのでお声がけしました。

「ゼロ・ウェイスト」実現のために、ブース全体を木と紙のみで制作することにしたんです。

鈴木:ドラッグストアショーは、一般の消費者、つまり企業からするとエンドユーザーが来場する展示会なんですが、ノベルティをもらうことを目的に来場している方が多いので、サステナビリティを学びに来ているわけではないというギャップがありました。そのギャップをどう埋めるかが、今回の出展における重要なポイントだったと思っています。

博展 サーキュラーデザインルーム 鈴木さん

ただメッセージを訴求しノベルティを持って帰ってもらうだけではなく、このブースに足を運ぶことによって得られる学びがあり、その学びから消費者の行動変容に繋がってほしいという想いがありました。

福地:多くの来場者に「クレシア  サステナビリティ」を伝えられるよう、まずはブース全体がサステナブルなものであることが重要だと考え、「ゼロ・ウェイスト」に向けて設計していきました。「ゼロ・ウェイスト」実現のために、素地のままの木工壁面や床、日本製紙グループの製品であるパルプ由来の素材「ミネルパ®︎」等を使用し、ブース全体を木と紙のみで制作することにしたんです。やるからには全て木質資源でつくり込みたいなと。

博展 デザイナー 福地さん

繁田:これまで数多くの案件でサステナビリティ実装にチャレンジしてきた私たちにとっても、紙と木だけでつくるブースというのは初めてのことでした。その点をやりきりながら、来場者に対して大きなインパクトを残せたらなと思っていました。

博展 プロデューサー 繁田さん

荒川:ここまでコンセプトに振り切ったブースは私たちにとっても挑戦でした。新しい情報発信の仕方ですよね。 

鈴木:ブース自体にインパクトを残しつつ、木質資源は環境にいいということを伝えながらきちんとリサイクルしていただけるように啓発するスペースも設けました。
来場者の行動変容につながり、そして「その行動変容を起こしてくれたきっかけが日本製紙クレシアだった」と思ってもらえることでブランドへのエンゲージメント向上にも繋がるのではと。

特にスタンプラリーのカードにもこだわりましたね。ブース内を回り、各スポットでスタンプを押し、最後にノベルティをもらうというコンテンツなのですが、商品としては使えないティシューの箱の端材をカード台紙に活用しているんです。

印刷がずれたティシューの箱の端材は通常もリサイクルされますが、その前に新しい役割を与えることで新たな紙資源を調達しないという点が、サステナビリティの体験としてとても分かりやすいですよね。さらに、体験の最後には来場者自身でラリーカードを回収ボックスに入れていただきました。このような古紙再生の一連の流れを体験してもらうことで、リサイクルを身近に感じてもらうきっかけに繋がったんじゃないかなと思いますね。

齊藤:ブースデザインだけでも“クレシア サステナビリティ”を訴求できていましたが、この体験コンテンツによって、一貫したメッセージとして来場者に説明できましたね。
また、この体験を通して、作った製品の一部は古紙として再生されているという事実を来場者に知ってもらえた点も会社としてプラスになったんじゃないかなと感じています。

つくった後にリサイクルする方法を考えるのではなく、リサイクルするためにどう作っていくかという視点で設計していった。



福地:「ゼロ・ウェイスト」を実現するために細部まで気を遣う必要がありましたね。全ての部材をリユースもしくはリサイクルするために、例えば、床は一般的にはパンチカーペットで行うところを今回は木製のパネルにしました。また、造作はすべてリサイクルできるよう、糊や接着剤は使っていません。木材と異素材を接着してしまうと混合廃棄物として焼却処理になってしまうので、ビスだけで固定し、マテリアルとしてリサイクルできる設計にしました。なぜ造作に接着剤を使わなかったかというと、分解して木合板を素材として別の用途に再利用するためです。できる限りリサイクル率を減らし、リユース率を高める設計を心掛けています。

接着剤を一切使わないということを実現するため、造作同士のビスでの固定の仕方、会期後のビスの外し方など博展の制作スタジオT-BASEの制作メンバーにも作り方を相談しながら進めていきましたね。
なるべくリユースを目指し、他の展示会でも流用できるような設計を意識しました。

他にも、普段はカッティングシートなどのビニールを使った印刷物が多いのですが、今回は全てダイレクト印刷をしました。

もちろん、展示会なのでエコだけではなくデザイン性も必要です。
例えば、これはクレシアの製品をイメージしていただけるよう、上物に紙を垂らすことで紙のやわらかさを表現しています。

これは、実際のトイレットロール 『スコッティフラワーパック3倍長持ちロール』と同じ幅と長さで作っていて、商品の特徴を可視化しているんです。このように全てのデザインに意味を持たせて設計しています。

それから、施工中も廃棄物を出さないように工夫しました。例えば、展示品を梱包していた段ボール箱を古紙として回収したり、本来であれば施工中は床に養生を張って保護するところを今回はそのまま施工したりと、ちょっとした工夫で廃棄物を削減できるんですよね。
施工中のサステナブルリテラシーを、パートナーも含めプロジェクトメンバー全員で上げていきたいという気持ちが強くありました。

廃棄物を出さないため養生を敷かず施工している様子。

また、撤去後にはマテリアルリサイクルの工場に行き、木合板を破砕したチップが再びパーティクルボードに生まれ変わるところまで見てきました。

つくった後にリサイクルする方法を考えるのではなく、リサイクルするためにどう作っていくか、という従来とは逆の手順で挑みました。

齊藤:これは知らなかったですね。そこまでやっていただけていたなんて。
普段の商品軸のコミュニケーションとは違った方法でクレシアの活動を知ってもらえる空間になっていました。また、エンドユーザーだけでなく、お取引様にも我々の活動を知っていただけたので、ビジネスに発展する機会につながると嬉しいです。

繁田:今回は初めての挑戦だらけでした。例えば木材の床は、足跡を目立たせないコーティングが必要だったなど、検証をして初めて気付くこともあり、私たちにとっても学びが多くありました。

お願いしたこと以上にプラスでご提案いただけるということは、私たちの提案をより深く理解してくれているんだなと思います。

齊藤:社内では商品軸の展示イメージが定着していたので、社員に理解してもらうのが少し大変ではありました。会期を迎えるまでは「 本当にこのブースでお客さんに伝わるのか」という不安があったと思います。

実際には、お客様から「本当に紙と木だけなんだね」「よくここまでやりきったね!」という反応をいただいたので、狙い通りのコミュニケーションが生まれるブースになっていましたね。

荒川:コンセプトがブースの空間からコンテンツまで一貫していたことで、お客様だけでなく社内からも評価が良かったです。
それから、お客様とは商品について話すことが多いのですが、今回は私たちがおこなっているリサイクル方法についてなど、企業姿勢についての話ができたことも良かったですね。
また、ブースへの評価はもちろんですが、「クレシアの商品に興味が湧いた」などの私たちが欲しかった声を来場者からいただけたので大変嬉しいです。

齊藤:ティシューの箱の潰し方やフィルムの剥がし方など、消費者ができるリサイクル方法を展示していたのですが、それも「来場者からすると廃棄物になるようなものを展示していたのは驚いた、分かりやすい。」という声もありましたね。

繁田: 会期中はたくさんの来場者にブースや体験の写真を撮っていただけたので大変嬉しかったです。

荒川:実は今回は実行には至らなかったこともたくさんあるんです。それほど博展さんはコンテンツの提案力もあり、そしてクリエイティブ力の高さはやっぱり100点だなと思います。

齊藤:博展さんは、私たちの要望に対し、より深く汲み取ってくれるんです。
今回で言うと、実は「展示会におけるゴミをゼロにしてほしい」とは、お願いしていないんですよね。お願いしたこと以上にプラスでご提案いただけるということは、私たちの提案をより深く理解してくれているんだなと感じます。 

繁田:新しく挑戦できるフィールドを提供してくださったような感覚で自分たちにとってもすごく勉強になりましたし、大変やりがいもありました。今後ともよろしくお願いします。

OVERVIEW

CLIENT日本製紙クレシア株式会社
PROJECT第23回JAPANドラッグストアショー

「クリネックス®」・「スコッティ®」フェイシャルティシューやトイレットロールなどの家庭紙をはじめ、ヘルスケア用品、業務用品などの製造販売を行う日本製紙クレシア株式会社の第23回JAPANドラッグストアショー出展において、博展は企画・デザインから施工までトータルサポートいたしました。

CREDIT

プロデューサー 繁田大輝、町田大樹
デザイナー 福地航大
サーキュラーデザインルーム 鈴木亮介、佐藤和徳
プロダクトマネジメント 由井樹
制作 永田愛夏、渋谷友美