世界最大級のタイヤメーカー株式会社ブリヂストン(以下:ブリヂストン)は、2023年1月に開催されたTOKYO AUTO SALON 2023 (以下:オートサロン)に出展しました。

博展は、本展示のコンセプト設計、プランニング、デザイン、コンテンツ制作、施工に至るまでトータルサポートしました。

このSTORYでは、サステナビリティの取り組みの打ち出し方について博展にご相談いただいた経緯、そして展示における体験設計、デザインに至るまでの背景を ブリヂストン 中原さん、岸さんとともに、本案件に関わった博展 プロデューサー 政田さん、プランナー 山中さん、デザイナー 松本さんが語ります。

左から ブリヂストン 岸さん、中原さん、博展 政田さん、山中さん、松本さん

Index

10年後も20年後も”走るわくわく”を提供し続けるためのコンセプト「Tomorrow Road」



– オートサロンではサステナビリティをテーマに出展されたと伺いました。

中原:はい。少し遡りますが、2020年にブリヂストンの第3の創業として「サステナブルなソリューションカンパニーになる」という方針が決まったんです。

そこで、前回の2022年のオートサロンにもサステナビリティのテーマを織り込むことになりました。※2021年はコロナにより開催中止。

右:ブリヂストン 中原さん

モータースポーツのファンが集うオートサロンでは、どうやってサステナビリティを伝えていくか、とても悩んでいました。来場者はモータースポーツのファンなので、サステナビリティの展示を見に来るわけではないですからね。

左:博展 山中さん

山中:消費者にとっては、サステナブルだからブランドを選ぶのではなく、「楽しい」「わくわく」「かっこいい」といった情緒的価値がどうしても優先されてしまいます。だからといってサステナビリティに取り組まなければ、10年後、20年後も今のように楽しく走ることはできません。10年後も20年後も”走るわくわく”を提供し続けるために、今ブリヂストンが臨む姿を表現した、「Tomorrow Road」というコンセプトをご提案しました。

中原:ご提案いただいた「Tomorrow Road」というコンセプトは、サステナビリティの姿勢を表現する一つの形だと感じました。このコンセプトに沿って出展した2022年のオートサロンでは、モータースポーツの楽しさ、走る喜び、運転する喜びをずっと支え続けていきたいというメッセージでブリヂストンの「走るわくわく」を提供しつづける姿勢を発信できたと思っています。

TOKYO AUTO SALON 2022

ブリヂストンの考えるサステナビリティにドライバーや来場者からも共感を得られた



岸:2022年出展時の評価がとても高かったため、2023年はそれをどうやって越えようかと悩みましたね(笑)敢えて厳しくフィードバックさせていただきつつ、2022年の良い部分は踏襲しながら、引き続き今回もコンセプト「Tomorrow Road」は変更しないでアップデートしてもらいました。
また、2023年で60周年となるモータースポーツを目玉で打ち出したい、というのが新しい依頼でもありました。

ブリヂストン 岸さん

山中:そして今回も、ブリヂストンにとって必要不可欠な、走る喜びや楽しさ、わくわくを全面に出すブースデザインに決定しました。最初はサステナビリティを全面に出す案も出ていましたが、オートサロンの来場者は会社のサステナビリティを見に来ているわけではないので、やっぱりブリヂストンらしくいこうと。

オートサロン2023 :ブリヂストンブース

また、「最高峰のタイヤ技術」「ドライバー支援」「環境への取り組み」の3軸が、ブリヂストンが発信したいサステナビリティであるということ、そして、わくわくはこの3軸から成り立っているんだと、来場者に共感してもらいたかったので、ドライバーや監督からも「Tomorrow Road」への賛同を得て、その想いをメッセージにしてもらいました。
それらのメッセージは、スマートフォンと連携させたコンテンツの操作によって、空間全体と連動し、未来に広がっていく光の動きも感じられます。

それから、会社におけるサステナビリティの取り組みのコーナーもブース奥に設置しました。
じつは、メッセージボードは、リサイクル素材でできているんです。

ドライバーのメッセージボード

岸:ドライバーのメッセージの提案は良かったですね。

「サステナビリティ = エコ 」と考えてしまいがちですが、本来は「サステナビリティ = 持続可能 」なので、「次世代に今後も提供し続けたい、わくわくってどんなもの?」というテーマにしたところ、ブリヂストンの考えるサステナビリティにドライバーや来場者からも共感を得られたのではないかと思っています。

いちモータースポーツファンとしてのこだわりが詰まったブースデザイン



政田:デザイナーの松本くんは、プライベートで鈴鹿サーキットにF1を見に行くほど、モータースポーツが好きなんだよね。モータースポーツファンである松本くんのこだわりがたくさん詰まったブースになっていたと思います。

右:博展 松本さん

松本:そうなんです。ブースの空間自体が「Tomorrow Road」を体現できている状態であること、そして、いかにモータースポーツファンである来場者を楽しませられるかを第一に考えてデザインしました。

今回のデザインは、ブリヂストンのモータースポーツ活動が60周年を迎える節目ということもあり、タイヤが残す轍とも重ね合わせて「軌跡」をモチーフにしました。

オートサロン2023

また、タイヤのコンテンツは来場者がなにか体験できるような、踏み込んだ内容にしようと考えていました。そこで提案したのが、手でタイヤを回せる展示です。

いつもタイヤの展示方法は一番気をつけています。ブリヂストンさんのタイヤは接地面にこだわりを持って開発されており、そこに技術が詰まっているんです。その技術の高さを感じられるような体験を作りたいと思い、今回の提案に至りました。

ただタイヤを回すだけではなく、タイヤを回す速さに合わせて、タイヤの下に埋め込んだモニターの映像とスピーカーから出るエンジン音とが連動するように弊社のエンジニアと協力しながら設計しました。直接タイヤに触れてもらい、質感や重さを感じてもらう以上に、視覚と聴覚でも感じられるような体験にしたいなと。

岸:タイヤの展示でいうと、今回は什器に入れるトレッドパターン(タイヤに刻まれた溝の模様)の向きが合っているかどうか確認をお願いされましたけど、タイヤの轍として表現するときには表裏逆転しちゃうので、苦労しましたね。

松本:そんなこともありましたね(笑)

松本:あとは、各所にサーキットの縁石やピットウォールなどのモータースポーツに関するモチーフを散りばめ、ファンの心をくすぐるような仕掛けを用意しています。単に車両を設置するだけでなく、空間と車両が一体となる展示構成を目指しました。やっぱり、車両の写真を撮る来場者が多いので、カメラを構えたときになるべく車両と一緒にピットウォールやブリヂストンのロゴが入るようにしたんです。

中原:ピットウォールのフェンスの反り返しとか、細かいところまでこだわってたよね。

岸:今回のデザインは、モータースポーツが好きだからこそ描けたデザインですし、どの角度から入っても楽しめるブースですよね。

松本:自分の好きなことを仕事のなかで表現できるので、本当にデザイナー冥利に尽きると言いますか、毎回楽しくお仕事させてもらっています。

デザインが作り込まれたブースはブランディングにも繋がる

山中:ここまでデザインを作り込むブースは久しぶりで、私たちもつくりながらわくわくしました。サステナビリティへの意識変化もあり、デザインで魅せる展示会が少なくなった昨今ではありますが、ここまで作り込むことはブランディングにもつながる、ということを再認識できた気がしますね。

「オートサロンの来場者はブリヂストンのコアユーザーになりうる方々だから、そこをきちんと育てたい。」という、ブリヂストンさんのマーケティング戦略がしっかりあるからこそ成功した展示会になったと思います。

中原:実際に、ブリヂストンが10年後も20年後も「走るわくわく」を提供しつづける姿勢をお伝えする事ができたと考えます。

岸:昨年からブースにおける”量(ブース訪問者数)”も増やしつつ、”質”もキープするのは難しいなかでやり遂げてくれました。
客観的に見ても、純粋に一番「入ってみたい」と思わせてくれるブースでしたね。

ココロに長く記憶されるものをつくることがサステナブル


中原:やっぱり、博展さんの企画力に感謝してますね。こちらの難しい要望にも真摯に向き合い一緒に考えて提案をしてくれます。

私たちブリヂストンは展示会やイベントに出るとき、「何を伝えるか」を最も大切にしているんです。デザインがかっこいいだけではなく、メッセージをきちんと考えて出展したい。その想いを汲み取ってくれます。

HAKUTEN 共創スタジオ「T-BASE」での検証の様子

岸:博展さんとお仕事をしていて感じるのは、やっぱり誠実さですね。実現できるだけの制作スタジオももっていますし、デザイナーとも直接話せますし、滞りのないオペレーションにも安心感があります。なにより、みなさん楽しんで取り組んでくれますしね。

わくわくを提供していきたいブリヂストンとしては、ココロに長く記憶されるものをつくることがサステナブルであると考えています。その点は、やっぱりプロだなと。今後も新しい企画を楽しみにしてます!

博展 政田さん

政田:自分は松本のようにもともとモータースポーツファンではなかったですが、ブリヂストンさんと仕事させていただいているなかで興味も持ち、楽しく取り組ませていただいています。

3年、4年と継続してお付き合いしているなかで、博展への期待も感じますし、「前回より落ちたな」とおもわれてしまったら博展の価値はそこまでなので、来年以降も期待を超えていきたいですね。

OVERVIEW

CLIENT株式会社ブリヂストン
VENUE幕張メッセ

株式会社ブリヂストンは、2023年1月に開催されたTOKYO AUTO SALON 2023 に出展しました。
博展は、本展示のコンセプト設計、プランニング、デザイン、コンテンツ制作、施工に至るまでトータルサポートしました。

CREDIT

プロデューサー 政田凌、塚田祐佳
デザイナー 松本哲弥、布川光郷、伊藤響
プランナー 山中優花
グラフィックデザイナー 宮崎淳
デジタルディレクション 神野祐介、三谷悠人、中川丘、石曽根奏子、吉原悠人
プロダクトマネジメント 松尾仁也、白石夏海
制作 本田洋平、松下健介、松村峰、渋谷友美