展示会場に足を踏み入れると、数えきれないほどのブースが並び、情報が氾濫しています。その中で、自社のブースに来場者の足を止めてもらうのは至難の業に思えるかもしれません。
「大手企業のような豪華なブースを作らなければ、埋もれてしまうのではないか?」
そんな不安を抱く担当者も多いでしょう。
しかし、展示会のプロフェッショナルは「装飾の価値は豪華さではなく、機能性にある」と断言します。
今回の記事では、展示会出展初心者の筆者が、来場者の心理を読み解き「つい立ち寄りたくなる」ブースを作るための基本的な考え方を、博展が提供する業界初のオンライン出展ブースサービス「パケテン」の担当者に聞きました。
目次
「装飾」は飾りではなく、来場者の課題を解決するための「看板」
──初めて展示会に出展する際、ブース装飾において最も意識すべきことは何でしょうか?
最も重要なのは、「装飾=ただの飾り」という誤解を解くことです。
展示会におけるブース装飾の役割は、来場者に対して「ここはあなたの課題を解決する場所ですよ」というメッセージを、瞬時に、かつ正確に伝えるための「集客装置」としての機能にあります。
来場者は明確な課題を持って会場を歩いています。百貨店で服を探すとき、ディスプレイを見て「自分の年齢層に合っているか」「好みのテイストか」を瞬時に判断して入店するように、展示会の来場者も一瞬でそのブースに立ち寄る価値があるかどうかを判断しています。
──その一瞬で足を止めてもらうために、具体的に何を掲示すべきですか?
多くの方がやりがちな失敗が、「社名」を最も大きく出してしまうことです。
もちろんブランディングが目的であれば別ですが、販路拡大や新規リード獲得が目的であれば、社名を大きく掲げても、来場者の心には響きません。

優先すべきは社名ではなく、「何ができるブースなのか」を示すキャッチコピーとグラフィックです。来場者は社名を探しているのではなく、自分の悩みを解決してくれる「ソリューション」を探しています。
例えば、IT製品で「ノーコード」という言葉を使うよりも、「特別なプログラミング知識がなくても、明日から現場で使える」と書く方が、課題を抱えた担当者の目には留まりやすくなります。
専門用語を並べるのではなく、「お客さまにとって分かりやすい言葉」に翻訳して掲示すること。これが集客の第一歩です。
「認知・理解・商談」のストーリーを設計する
──ブースのデザインを考える際、全体のレイアウトで気をつけるべきポイントはありますか?
ブース設計には、来場者の動きに合わせた「ストーリー」が必要です。私たちはこれを「認知→理解→商談(名刺獲得)」の3段階で考えます。

- 第1段階:認知(3〜5メートル先から)
通路を歩く人の目に飛び込んでくる上部の看板や、側面の壁面グラフィックです。ここで「何のブースか」を伝え、興味を持ってもらいます。 - 第2段階:理解(ブースの目の前で)
足を止めた来場者に対し、製品の実物やデモ映像、詳細な説明パネルを見せます。ここで「自分たちの課題にどう効くのか」を具体的にイメージさせます。 - 第3段階:商談(ブース内で)
具体的な対話を通じて名刺交換や商談に進みます。
このストーリーが分断されていると、どれだけ派手なブースでも成果には繋がりません。
この流れがスムーズに機能するようにパネルの配置や導線を最適化することが重要です。
──「理解」の段階でモニター(映像)を使うのは効果的でしょうか?
有効ですが、使い方に注意が必要です。モニターは「認知」の道具としては弱くなりがちです。歩いている人がわざわざ足を止めて数分間の動画を最初から見てくれることは稀だからです。
モニターはあくまで、足を止めてくれた人への「詳細説明(理解)」のツールとして活用するのが賢明です。製品が大きすぎて持ち込めない場合や、工場の稼働状況を見せたい場合には非常に強力な武器になります。
小規模ブース(0.5〜1小間)だからこそできる「引き算」の戦略
──最低限の出典単位である0.5小間〜1小間の小規模ブースにおいて、埋もれないための秘策はありますか?
小規模ブースの最大の武器は、「情報の凝縮」です。広いブースでは情報が分散しがちですが、3m×3mといった限られたスペースでは、伝えたいことを一つに絞り込む必要があります。
まず、「製品を並べすぎない」こと。あれもこれもと展示すると、結局何が主力なのか伝わらず、雑然とした印象を与えてしまいます。
最も訴求したい製品を主役にし、通路側に展示台を置いて、来場者が「ブースの中に入らなくても触れられる」ように配置するのがコツです。
実は、来場者は知らない会社のブースに入ることに心理的な抵抗を感じています。ですから、こちらから「入ってください」と誘うのではなく、「通路側に商品を出して、まずは触れてもらう」。
この物理的な近さが、コミュニケーションのきっかけを生みます。
──「照明」や「色」についても、効果的な使い方はありますか?
照明は最もコストパフォーマンスの高い集客ツールです。展示会場は意外と暗く、人の目は明るい場所に自然と引き寄せられます。標準セットにスポットライトを数灯追加し、パネルや製品を強調するだけで、ブースの存在感は劇的に変わります。

また、色の使い分けも重要です。パケテンでは壁面の色をカスタマイズできますが、例えば「コーポレートカラーの赤」や「目立つ黄色」を戦略的に使うことで、後から「あの赤い壁のブースの会社」という記憶のフックを作ることができます。
失敗しないための「ブース装飾の引き算」
──初めての方がやってしまいがちな「ブース装飾の失敗例」を教えてください。
一つは、先ほども触れた「情報の詰め込みすぎ」です。もう一つは、「ターゲットを絞り込みすぎて、機会損失を生むこと」です。
「この業界の決裁者だけにアプローチしたい」と装飾をガチガチに専門特化させてしまうと、隣接業界からの思わぬニーズを逃してしまいます。
展示会の面白さは「偶然の出会い」にあります。
自分たちが想定していなかった用途で自社製品が役立つことを、来場者に教わることが多々あります。装飾は「何ができるか」を明確にしつつも、門戸を広げ、多様な来場者が自分との接点を見つけられるような、「分かりやすさ」と「余裕」を持たせることが大切です。
限られた予算とスペースを「最強の武器」に変えるために
展示会の装飾は、決して「見栄」のためのものではありません。限られた時間と予算の中で、いかに効率的にターゲットと出会い、対話を始めるための「舞台装置」を整えられるか。それが勝負の分かれ目です。






