INTRODUCTION

UCC上島珈琲株式会社(以下UCC)は、一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)主催の「SCAJワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション2021」に出展。
日本全国&世界各国からコーヒー関係者が集う、アジア最大規模のスペシャルティコーヒーカンファレンス・展示会である同イベントは11月17日-19日の3日間、東京ビッグサイトで開催され、約2万人の来場者で賑わいました。

同イベントにおいて博展はブースの企画プランニングからデザイン、施工、運営まで担当し、来場者・お客様のアンケート投票によって選考される「SCAJブースアワード」において最優秀ブースに選出されました。

今回はこのUCCブースを担当したプロデューサー廣瀬、デザイナーの高橋、竹塚にインタビューし、成功の舞台裏を語ります。

左から廣瀬(プロデューサー)、竹塚(デザイナー)

OUTLINE

カップをトリガーにUCCブランドを体験するブース

廣瀬:
今回は2021年11月からスタートしたUCCの新ブランディングプロジェクト「COFFEE CREATION」のコンセプトを軸に、UCCが生み出すおいしいコーヒーを支えるクリエイションをご紹介しました。

「COFFEE CREATION」には「おいしいコーヒーはさまざまな人のクリエイションによって生まれている」という想いが込められており、それは「絶妙なブレンド」「豆の個性に合わせたロースティング」「品質のスペシャリスト」「生産地との絆」をはじめとしたさまざまな「おいしい事実」によって支えられています。

この発表されたばかりのブランディングプロジェクトを「どう来場者に伝えていくか?」
方向性がなかなか定まらない中、UCCの担当者の方と何度も企画案を出し合い、検討・提案を重ねた結果、数ある「おいしい事実」のうち、4つのテーマを体感できるブースを制作することになりました。

「COFFEE CREATION」参考URL:https://www.ucc.co.jp/coffeecreation/

竹塚:
ブースは一方通行型になっており、来場者は入り口で透明なコーヒーカップを受け取ります。
このカップをトリガーに、4つの「おいしい事実」を体験し、最後に自分の好みに合わせてブレンドした豆を試飲できるブースになっています。

「生産地との絆」エリア
コーヒーカップを置くと鳥のさえずりと共に、UCCが取り組んでいる生産国との取り組みが動画で流れる仕組みを活用しています。

この動画ではジャマイカの直営農園における地元のコーヒー農家の方々との取り組みだけでなく、JICAと共に取り組んだ、エチオピアやルワンダでのコーヒーの品質改良の活動、サステナブルコーヒーへの想いなどをご紹介。
コーヒーが自然の恵みによって生み出されるものであるからこそ人と自然の切り離せない関係性をより感じていただくために、ブースも本物のコーヒー豆の木を入れつつ、現地に生息している植栽で装飾しています。

「品質のスペシャリスト」エリア
ここでは生産地の異なる9種類のコーヒー豆を展示し、それぞれの品質管理に関する取り組みを紹介。
各工程の雰囲気を想起してもらうために、シャーレに入ったコーヒー豆をルーペで拡大して展示しており、カップを展示台に置くと、豆の特徴や品質管理のポイントなどの文章が照らされます。

「豆の個性に合わせたロースティング」エリア
焙煎機のようなデザインのこのエリアは9種の焙煎豆の香りの違いを体験するエリアです。

品質のスペシャリストの手によって厳選された生豆をUCCのロースティング技術によって焙煎し、コーヒーの香りとしても重要な焙煎後の香りを産地別にご確認いただける仕掛けを用意。
焙煎豆自体の香りはハンドルを回すと風と共にふんわりと香り、コーヒーを粉砕したときの香りはアクリルの蓋を開けることでご体験いただけるようになっています。また、展示されている豆はその場で試飲できます。

「絶妙なブレンド」エリア
UCCが開発したオリジナルのシステムを使用し、口当たりのライト/ストロング、味わいの苦み/酸味の2軸から自分の好みを選択するとおすすめのブレンド比率が提案されます。

さらにここでは、診断結果に合わせて目の前で1杯分のコーヒー豆をブレンドしてもらえます。

抽出/試飲エリア
ここでは「絶妙なブレンド」エリアで受け取ったブレンド豆を、ハンドドリップと光サイフォンの二通りの抽出方法から好みを選択して、UCCのプロフェッショナルが丁寧に抽出したものを試飲できます。

PLANNING

UCCが誇る「CREATION」を深い体験で伝える

竹塚:
デザインプランを考える上で、来場者目線で体験を構成したことがポイントでした。

UCC様は「おいしいコーヒーを作り出すためにどのようなことができるのか」を日々考え、コーヒーと真摯に向き合っていらっしゃいます。ブースでもその姿勢を来場者にわかりやすい形でお伝えすることを目的にしようとクライアントとディスカッションを重ねてすり合わせました。

この姿勢を生活者側の目線から整理すると、コーヒーを飲む体験はUCC様と生活者との接点であるテーブルから始まっていることに気付きました。

そこで「生活者と生産者を繋ぐテーブル」をデザインコンセプトに、全ての体験が「テーブルにカップを置くこと」から始まるように設計しました。

<デザイン時のラフイメージ>

また、接触が制限されており、来場人数が絞られている状況だからこそ、一人ひとりの来場者に五感を使って、楽しめる体験を提供できると考えました。

このブースでは各産地のコーヒー豆の香りの違いや、焙煎前後のコーヒー豆の違いを嗅覚や味覚で体感できるだけでなく、UCCのプロフェッショナルによってブレンド・抽出された味わい深いコーヒーの試飲もできます。まさしくUCC様の「COFFEE CREATION」を体験するブースにできましたね。 結果的に、コロナの影響で来場者数が減っているにも関わらず、20分以上の待機列が発生するなど、多くの来場者の方にブースを体験頂きました。UCCの卓越した技術力と博展の体験デザインにより、このブースを訪れた方はこれまで以上にUCCのコーヒーの裏側にある「おいしい事実」を体験できたのではないでしょうか。

KEY FACTOR

デジタルコンテンツ×体験デザインで質の高い体験に

廣瀬:
このブースではカップをトリガーにした体験コンテンツが散りばめられていますが、そこに心地よさを感じるほど質の高い体験設計ができていました。

博展内にはデザイナーだけでなく、デジタルコンテンツを制作するチームも内包しており、来場者の体験を最大限高めるためにお互いが強みを発揮しています。

説明しなくとも「カップを置けば何かが始まる」と無意識に感じさせるデザインと、カップを起点に始まる五感で触れる体験コンテンツの2つが合わさることによって、質の高い体験になりました。

デザインとデジタルが調和したクリエイティブを提供できる企業は少ないのではないでしょうか。

常設空間のように細部まで考えられた設計

竹塚:
一般的に展示会ブースのような仮設空間は、意匠デザインとは別にキャプションやパネルで製品説明の機能を追加するなど、意匠デザインに機能を後付けしたようなブースになってしまいますが、今回は極限まで余分なサインやキャプションを排除し、意匠性と機能性を両立させました。

例えば、カップを置く位置や情報を掲載する位置は実際に造作を作りながら来場者の動きを細かく検証するなど、常設空間のデザインプロセスを展示会ブースに応用。 また、納期やコストを考慮しながらも、デザインとして美しい納まりにするために制作やプロダクトマネジメントのメンバーも巻き込んだことで意匠性も担保できました。

廣瀬:
各エリアで伝えたいポイント・表現方法がぶれていないかをクライアント担当者と最後まで確認しながら、コンセプト通りのブースを制作できました。

カップを何度も置いていたり、ハンドルを回して香りを楽しんでいたりする来場者の様子を見ると、UCCの隠された「おいしい事実」を驚きと共に伝えられたかなと思います。UCC様からも「企画までかなり試行錯誤したけれども、これまでよりも濃い体験ができるブースにできた」というコメントもいただきました。 博展が設計した空間とUCC様のプロフェッショナルによるコミュニケーションが合わさったことで、来場者にとって素晴らしい体験を提供できたと思います。

SECTION

広域なマーケティング活動のサポートへ

廣瀬:
これまでもUCC様とのお仕事において、弊社がサポートしたブースデザインが空間デザイン賞を受賞するなどデザイン面においては社外からも高く評価いただいています。

今後は展示会ブースにおいても高いデザイン性を発揮しながら、事前集客や店舗・ECへの送客などより広域のマーケティング活動をサポートできるようになりたいと考えています。

細部までデザインを突き詰め、さらに質の高い体験

竹塚:
今回は図面や3Dデータ上でデザインするだけでなく、実物を見ながら質感や納まりを検証しました。

例えば、展示什器もただ箱を作るのではなく、床から1センチ浮かせて、空間としての締まりを出したり、全体を統一した質感にするために塗装方法を検証したりと、細部までしっかりこだわったことで、ブースの第一印象だけでなく、ブース内での体験の質が高まったと感じています。

これは常設空間も実績がある博展だからこその得たノウハウであり、それをブースにも応用できた良い事例でした。 これからも細部までのデザインを突き詰め、さらに質の高い体験を創っていきたいと考えています。

左から廣瀬(プロデューサー)、竹塚(デザイナー)

OVERVIEW

CLIENTUCC上島珈琲株式会社

CREDIT

アートディレクター 高橋 匠
デザイナー 竹塚 晃司
プロデューサー 廣瀨 雄基 / 圷 裕樹 / 坂井 暖
プロダクトマネジメント 長谷川 皓一
デジタルコンテンツディレクター 石曽根 奏子 / 渡邉 実莉
制作 矢作 貴広