INTRODUCTION

オンラインセミナーが一般化する中で、会場に集客してセミナーを実施し、その様子をオンラインで配信する“ハイブリッド型”のイベントが増えています。

株式会社博展は、2021年2月に開催された日本最大規模のサステナブルに関するコミュニティイベントである『サステナブルブランド・ジャパン横浜2021』(以下SB横浜)を開催。現地イベントの様子をオンライン配信する“ハイブリット型”という新しい形式での開催に挑戦しました。

イベント参加者数が増加しただけでなく、両形式の参加者から高く評価され、大成功を収めたSB横浜成功の要因は何だったのか。

今回はイベントを主催したサステナビリティ推進局の鈴木 / 松本がイベントの開催に踏み切った要因を語ります。

OUTLINE

リアルイベント×オンライン配信のハイブリット開催で来場者数が前年比25%アップ

鈴木:
日本において5回目となる「サステナブル・ブランド国際会議2021横浜」(以下SB横浜)は、世界的なサステナビリティの潮流や取り組みを共有し、各業界の最前線で活躍する企業と情報交換できるコミュニティイベントです。

米国サステナブル・ライフ・メディア社が展開する国際会議で、13カ国14 都市で開催(2019 年度)され、来場者数はグローバルで1.3 万人を超える規模を誇ります。

今回はコロナ禍を受けて、会場に人数制限を設けたうえで集客をしてセミナーを開催し、その様子をLIVE配信するという“ハイブリット型”のイベント運営に挑戦しました。

『WE ARE REGENERATION』をテーマに、200名におよぶ国内外のイノベーションリーダーが登壇し、2030年のSDGs達成に向けて世代を問わず多くのイノベーターが多角的なテーマで熱い議論を交わしました。

PLANNING

“どうやったら開催できるか”を考え、“リアルイベント×オンライン配信”のハイブリット開催へ

鈴木:
私たちはどうやったら昨今の状況下でもイベントを開催することができるかを1年間議論してきました。

偶発的な出会いによって何かを生み出すことに意味があると思っていたので、“コミュニティイベントをオンラインで実施”なんて、最初は1ミリも考えていなかったんです。

イベント開催をどうしようか悩む過程で、世間に向けて緊急アンケートを実施したところ、全世界的にサステナビリティへの興味関心が高まっている中で、その先にある未来に対して希望を持っている方がとても多かったんです。

SB横浜は、サステナビリティに対しての希望を推進させるコミュニティイベント。

我々はその期待に応えるためにも絶対に開催するべきだと考え、開催を決心しました。

「ではどうやって実現するか」を考えたときに、社内のディレクションチームがふと頭に浮かびました。

ニューノーマルの時代に突入して約1年が経過したことで、社内の配信技術 / ノウハウが高まっており、ディレクションチームを信頼して一緒にイベントの成功を目指すことができるな、と感じたんです。

コミュニティイベントとして成り立つかという点に対しては不安が残っていましたが、博展の新しい事業としてもチャレンジするべきタイミングだと感じ、社内のディレクションチームに任せることを決断しました。

<ディレクションチーム・HAKUTEN配信スタジオの様子>

松本:
現地会場では感染症対策を徹底し、オンライン参加者に向けて50を超えるセッションのほぼ全てをリアルタイムで配信しました。

オンラインをうまく活用したことで例年の参加者数を大きく上回り、前年度から25.8%もアップ。

2日間で4000人を超える来場者を記録し、無事成功を収めました。

松本 : 
SB横浜は登壇者 / 来場者両方に海外からの参加者がいるので、オンライン参加者に向けた配信動画では、日本語/ 英語通訳版の2種類を用意しましただけでなく、海外からの登壇者には、録画配信 / LIVE配信の2種類でご登壇いただきました。

LIVE登壇は時差もありますが、LIVEでのコミュニケーションにこだわる方は早朝に講演をしてくれるケースも。

オーディエンスはLIVE参加のほうが満足度が高い傾向にあります。ですから、できるだけLIVE配信で臨場感のあるセミナーで実施しました。

また、SB横浜ではルーム毎に複数のセッションを同時に行っており、来場者はプログラムを見て自分の好きなセッションに足を運びます。

今回は「オンライン参加者にもできるだけ多くのセッションをお届けしたい」という思いが強く、最終的に8セッションを同時に生配信するという前代未聞の事態に。社内のリソースを信頼していたからこそ、実現できたことが多かったですね。

KEY FACTOR

「オンラインだからできること」がイベントの可能性を拡げた

松本 : 
コロナウイルスの影響で、2020年2月のSB横浜以降APACが開催できていなかったこともあり、1年前と同じ場所、同じタイミングでAPACをリスタートさせたいという強い想いから、今回私がAPACとの共同開催を提案しました。

初めての共同開催、しかもオンラインでの配信でしたのえ、反省点も多々あります。例えば、日本国内におけるサステナビリティへの関心が他国と比較して低く、海外各国のセミナー内容が理解されなかったり、セッション内容が開催国である日本の内容に即してしまったり、改善すべき点は山積みです。

しかし、今回のAPAC共同開催はオンラインだからチャレンジできたことです。

新しい時代の第一歩として、新しい形式で開催できたことが大きい成長だと感じます。

<オンラインと会場でセッションを行う様子>

鈴木:
SB横浜はコロナウイルスの感染者を出すことも配信トラブルもなく、無事に終了。前年度の参加者を大幅に上回る2日間で合計4,000人を動員し、大成功を収めました。

イベント参加者を対象に行ったアンケートによると、現地参加者とオンライン参加者の最終的な比率は65:35という結果になりました。オンライン参加がやや多いですが、現地参加も十分多い結果に大変満足しています。

←現地参加とオンライン参加の比率

回り込みテキストです。親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。

現状多くのイベントは現地参加が少なく、オンライン参加がほぼメインなのに対して、現地参加の比率もかなり高水準であり、“高い満足度と現地参加を両立させたSB横浜はすごいね”というご意見を社内外から多くいただいていますね。

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現地参加者とオンライン参加者の満足度を比較した結果、満足度に差は見られませんでした。これには我々も驚きましたね。

オンライン参加者は「コロナ禍でイベントへの参加をあきらめていたが、参加できた」という点において、満足度が非常に高い傾向にあることもわかりました。

他にも、地方の企業の方から「オンライン配信のおかげで出張費がかからないので、上司から是非参加してほしいと勧められた」というご意見をいただき、とてもうれしい気持ちになりましたね。

松本:
今回現地イベント×オンライン配信のハイブリットで開催したことで、イベントの活用方法が拡がったと感じています。

SB横浜は有料イベントであり、これまで参加者はマネジメント層が非常に高い割合を占めていました。しかし、今回オンライン参加という選択肢が生まれたことで、一般職の方の参加も増えましたね。オンライン参加で裾野を広げることができたから、仲間になりたい / 知識を得たいという人が簡単に参加できるようになりました。

また、参加人数が増加しただけではなく、前年度と比較して2日間連続で参加する方も増加し、イベントへのコミット率を高められたと感じています。

オンライン参加という選択肢が増えたことによって、イベント参加の目的も多様化したように感じています。

本来SB横浜はコミュニティイベントなので、ネットワーキングを目的に参加される方が多かったのですが、今回は勉強 / 情報収集のために参加する方の割合が増え、その多くはオンライン参加でしたね。

NEXT TRY

SB横浜を成功に導いた2人が考える“イベントにおけるこれからのスタンダード”

松本 : 
今回APACと共同で開催したところ、タイでは独自にパブリックビューイングのように同じ会場でセミナーを視聴し、終了後にワークショップを行うなど、オンライン配信をうまく活用してくれました。

今後イベントを企画する際は、開催後に参加者同士のネットワークを形成できる仕組みが必要だと感じています。世の中が落ち着いた頃に再び集まってもらえたら、私たちとしてこれほどうれしいことはありません。

APACに関しても、次回はサステナビリティへの興味関心が強いタイで開催したいなとか、日本でコミュニティを集めてセッションを配信し、各国でディスカッションする仕組みを作りたいなど、これから先の未来も楽しみなことが多いですね。

鈴木:
今回は2021年の今できる最大限のイベントのカタチでした。

トラブルなく、現地参加者 / オンライン参加者両方でクオリティを担保し、満足して帰ってもらうことができたことがまずとても素晴らしいことだと感じています。

ですが、SB横浜はコミュニティイベントです。

ネットワークを生み出すという点において、オンライン参加者をいかに巻き込んでいくか、改善点はまだまだ山積みです。

今後はもっとインタラクティブ性を組み込みながら、ネットワーキングの視点を強化していきたいですね。

これからの時代、リアルイベントは元のカタチには戻らないでしょう。

だからこそ、今回の参加者データをどう捉えて活用していくのかがすごく大切だと感じています。

出会うことの重要性だけではなく、新しい出会いによってもたらされる様々な可能性を作っていくという意味では、イベントをハイブリットに開催して裾野を広げるというスタイルは今後主流になっていくでしょう。オンラインとリアルの棲み分けがどう変わっていくのか、これからが楽しみです。多くの人が住居などの様々な制約にとらわれずイベントに参加できる時代がもう近いですね。

<来場者が密を避けコミュニケーションをとる様子>

そして、これからは参加者一人ひとりがハイブリット型のイベントをどのように活用するかが重要になってくるでしょう。それぞれの目的に合わせてメリットデメリットを比較し、参加形式をセレクトできるということが今後のスタンダードになるのではないでしょうか。

我々もそのニーズに応えられるよう日々チャレンジを続けていきます。

OVERVIEW

CREDIT

プロデューサー 鈴木紳介・松本侑記
ディレクター(全体統括) 長坂智崇
テクニカルディレクター 中條卓