1年の延期を経て、イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26が11月13日に閉幕。
約130カ国が参加したこの会議では、「グラスゴー気候合意」が採択され、2030年までに気温上昇を1.5度未満に抑えるという努力目標を設定しました。
これにより、脱炭素に向けた動きがさらに加速する過程で、サーキュラーエコノミー(循環型社会)の実現を目指し、廃棄物を生み出さないムーブメントが注目を集めています。

博展は、持続可能なイベント業界を実現すべく「サステナビリティ・アンバサダー制度」を開始。その活動の一環で、近年注目を集めるようになったイベントの廃棄物問題を解決する糸口を模索しています。

今回は廃棄物の“捨て方をデザインし、使い方を創造する”というビジョンのもと、“捨てる”と“使う”をつなぐリマーケティングビジネスを展開される株式会社ナカダイさん・株式会社モノファクトリーさんに、サステナビリティ・アンバサダーが訪問し、廃棄物のサステナブルな活用法を考察します。

Agenda
これからのスタンダード「サーキュラーエコノミー」という概念
株式会社ナカダイ・株式会社モノファクトリーについて
実際にナカダイの工場・モノ:ファクトリーを見学!
サーキュラーエコノミーの実現には「廃棄物の情報共有」が必要不可欠
編集後記

これからのスタンダード「サーキュラーエコノミー」という概念

サーキュラーエコノミー(循環型社会)は、従来使用後に廃棄されていた製品や原材料などを、調達・設計の段階から回収・資源の再利用を前提とし、廃棄物を出さずに資源を循環させる経済の仕組みのことです。

オランダ政府 From a linear to a circular economyより引用

今の日本には、廃棄物を埋め立てられるスペースがあと約20年分しか残っていないといわれています。
このままでは近い未来、“モノが自由に捨てられない時代”に突入してしまうと考えると、「モノを循環させること」は単なる努力義務ではなく、私たちがこの先、必ず向き合うべき事象です。

株式会社ナカダイ / 株式会社モノファクトリーについて

株式会社ナカダイは「使い方を創造し、捨て方をデザインする」をビジョンに、リマーケティングビジネスを実践する総合リサイクル企業。
1937年に鉄・非鉄のスクラップ業者として創業して以来、中間処分業許可やISO14001の取得、中古リユース市場の創設、廃棄物に関するコンサルティングを展開しており、リサイクル率99%を達成しています。

リマーケティングビジネスとは?

廃棄物を処理するだけでなく、廃棄物を活かし、繋いで、再度循環させるビジネス。
ナカダイではただのリサイクルに留まらず、従来の「捨てる」と「使う」をつなぎ、これからの“廃棄物”にリサイクルだけではない、クリエイティブな新しい価値を創造するべく、様々な活動を行っています。

株式会社モノファクトリー

グループ会社のモノファクトリーでは、「循環を前提とした社会の構築」をビジョンに、様々な企業・社会における“循環可能な”仕組みづくりをサポート。
これまでにない廃棄物の使い方の創造を目指し、ビジネススキームの構築から、企業様の保管されているモノのリユース、リサイクルの提案まで、各企業様とのパートナーとして、循環を前提とした社会の構築を目指しています。

株式会社ナカダイ http://www.nakadai.co.jp/

株式会社モノファクトリー https://www.monofactory.com/


ー実際にナカダイの工場&モノ:ファクトリー を見学!

リサイクル率 99%を実現する 廃棄物中間処理施設(駒形工場)

ナカダイさんは駒形工場と粕川工場、2つの工場を運営しています。
私たちは最初に駒形工場を見学!

駒形工場では、主に廃棄物処理を行っています。
廃棄物を分別、破砕、圧縮、溶融などの「中間処理」という手法を用いて、廃棄物を無害化するとともにかさを減らし、運搬効率を上げています。

この処理を行った後、廃棄物の種類・特徴に合わせてマテリアルリサイクルかサーマルリサイクルを行っています。

※マテリアルリサイクル
不要になり使用できなくなったモノをマテリアル(原料)として再生利用するリサイクル。プラスチック、金属くず、OA機器、蛍光灯 などは再生資源としてリサイクルされます。

※サーマルリサイクル(熱源利用)
不要になり再生利用できないモノをサーマル(熱源)として利用するリサイクルです。木材、プラスチックの一部が燃料として再利用。

不要になったモノの新しい使い道を見つける場所(粕川工場)

もう1つの粗川工場は、企業の廃棄物や備品を、在庫管理から廃棄まですべて行う倉庫のような施設です。
施設内に情報(廃材)をストックすることで、リユースしたい人の需要と供給のタイミングが合わない課題を解消しながら、無駄に処理せず、効率よくリユースできる仕組みを整備しています。

<大型マテリアル倉庫(粕川工場内)>

要らないモノを新たな視点で見ることで、「欲しいモノ」に!(REMARKET)

様々な企業から「使われていないが、まだ使えるもの」が集まる場所。
企業が一度使って不要になったモノや、未使用で使わなかったモノなど、「まだ使える」が集まる場所です。
リマーケティングセンター内に廃材の情報をストックしてあることで、リユースしたい人の需要と供給のタイミングが合わない課題を解消し、効率よくリユースできる仕組みが整っています。

<REMARKET>

他にも、施設内にはMRC(マテリアル・リバース・センター)という、企業や個人から引き取った不要になったモノを中古品として流通させるオークション会場があり、リユースできる資源の”競り”が行われています。
さらに、数量が集まらず、個人向けに販売できそうなものは、前橋市のブックオフ内にあるREMARKETにて販売も行っているそうです。

これからの廃棄物のあり方を考える場所(モノ:ファクトリー)

ナカダイさんのグループ会社モノファクトリーさんのショールームは、廃棄物をどうやってサステナブルに活用できるか一緒に考える場所です。
ここでは廃棄物の循環に関する基礎知識を学びながら、それぞれの企業に合う産業廃棄物の循環システムを共創することができ、商品開発の段階からどのように資源を循環できるかご相談が集まることも多いのだそう。

サーキュラーエコノミー実現には「情報共有」が必要不可欠

今回のナカダイさん・モノファクトリーさんへの訪問を通じて、廃棄物に関する事前の情報共有が、廃棄物を資源として循環させる可能性を広げる第一歩になると学びました。
事前情報なく、使用後にリサイクルをしたいと工場に廃棄物を持ち込んでも、廃棄物の種類が何で、どのくらい量があって、素材、特徴がわからないと打つ手が限られてしまいます。

「何がどれくらい使用されるのか」を事前に知ることで、リサイクル方法の最適解をあらかじめ導くことができ、仕分け作業も効率化し、価格を下げ、リサイクル率を上げるという好循環を生み出すことができます。

「廃棄物は、本当に廃棄物なのだろうか。」
自分が廃棄物だと思っているモノを、誰かが必要としているかもしれません。
想像力を膨らませ、「捨て方をデザインする」という意識を、社会全体で高めていくことが今後求められていくのではないでしょうか?
廃棄物をただ燃やしたり、埋め立てたりするだけではなく、様々な活用法を拡げ、循環を前提にした社会を目指し、博展も尽力していきたいです。

編集後記

イベントは使用されるものの種類や数があらかじめ管理されているため、事前に廃棄物の情報共有がしやすく、適切なリサイクルを行いやすいのが特徴です。
しかし、イベントや展示会は、多くの来場者を集め、会期中は華やかですが、イベント終了後は慌ただしく片付けに追われ、什器や備品が入り混じったまま処分されるのが現状。

我々は工場に訪問後、博展が担当した展示会ブースの造作の一部をナカダイさんに引き取ってもらい、廃棄物を分類し、データ化をしてもらいました。

今後はそのデータを基に、デザイン・設計段階で廃棄物をゼロにできるデザインを組むことはできないか、廃棄物を何か新しいマテリアルとして活用できないかを検討していきたいと考えています。