環境に配慮した植物由来の繊維の開発・製造を行うBioworks株式会社様(以下Bioworks) が2021年12月31日(金)~2022年1月17日(月)の期間、有楽町マルイにてポップアップショップ『NEXT ESSENTIAL STORE』を出店。

サステナビリティ・アンバサダーを務めるプロデューサーの橋本・デザイナーの藤原と、プロダクト・マネジメントの熊崎、サステナビリティ推進室の白川が本案件を担当し、サステナブル商品を展開するにふさわしい“環境にやさしいポップアップショップ”を実現させました。

今回は担当者へのインタビューを通じて、環境配慮型のイベント実現にむけた課題や、博展の今後の展望を紐解きます。

ー『NEXT ESSENTIAL STORE』の案件概要を教えてください。

橋本
Bioworks様はポリ乳酸を改良した繊維「PlaX Fiber(プラックスファイバー)」を開発し、その素材の機能を生かした製品(タオルやルームウェアなど)の企画・販売を行っている企業です。
「NEXT ESSENTIAL STORE」は、Bioworks様が運営する私たちにとっても、地球にとってもやさしい、少しだけ未来の当たり前「ネクスト・ エッセンシャル」な素材で作られた商品を集めた体験型セレクトショップです。

今回のショップで博展はデザイン・施工を担当しています。Bioworksのご担当の方と「商品の訴求だけでなく、来店者が環境課題について考えるきっかけになるような場所にしよう」という方向でプランを進め、実現にいたりました。

橋本
私はサステナビリティ・アンバサダーとしてプロジェクトのメインアカウントを担当したのですが、デザイナーにも同じくアンバサダーとして活動している藤原さんをアサインしました。藤原さんはサステナビリティ・SDGsに関心が高いだけでなく、活動の一貫で、環境配慮型の新マテリアル開発にも取り組んでいるので、プロジェクトを進める上で非常に頼もしかったですね。

ーでは、今回のプロジェクトのコンセプトやデザインテーマを教えてください。

藤原
今回のポップアップショップは、「地層-Layering-」をコンセプトに、全体のプランニングやデザインの方向性を決めていきました。

この着想は、海岸に廃プラスチックによる「プラスチック地層」が発見されたというニュース記事を見つけたことによります。

これまで私たちが地球に「蓄積してしまったこと」、これから私たちが地球に「積み重ねていくべきこと」をデザインとして可視化し、来店者が昨今の環境課題について改めて考えるきっかけとなる場所を目指しました。

今回「地層」をイメージしたメインとなるディスプレイを制作したのですが、これは下層部が元々大地に存在したもの(土・葉っぱ)、中層部は人間が排出してしまったもの(プラスチックなどの廃棄物)、上層部がこれから積極的に選んでいきたいもの(Bioworks様の製品や環境配慮型の原料を使用した製品)で構成しています。

中層部を構成するプラスチックの廃棄物は、実際に私たちが東京近郊の海岸に行き、拾ってきたものを使用しています。
悲しいことに海岸にはたくさんのプラスチックの袋、漁網など様々なごみが落ちており、すぐにプラスチックケース2つ分集めることができてしまいました。

<海岸で拾ったごみ>

他にも、展示什器を積層段ボール素材で作成したのですが、接着剤を使用しないように天板の下の積層段ボールに穴をあけて紐で括って固定するなど、様々な工夫を凝らすことで、環境負荷を最大限低減したショップとなるよう心掛けました。(接着剤を使用するなど、異素材が組み合わさると、リユース・リサイクルができなくなってしまう。)

ーここまでサステナブルに注力したプロジェクトは博展でも初めてかもしれませんね。今回新しいチャレンジをするにあたり、何か苦労した点はありましたか?

白川
環境に配慮した素材は、流通量が少なく価格が高いために、限られた予算の中で採用することのハードルが高く、実際に使用できる機会はまだまだ希少です。活用のシーンが限られているため、使ってみなければ分からない素材の特性や加工のノウハウが社内に蓄積されていません。そのような状況下で、使用する素材の情報収集には手間と時間がかかりました。

橋本
今回、ほとんどの制作物を事後に他のプロジェクトでも再活用できるようなもので構成しつつ、壁面は通常のシート貼りにしています。特別に環境に配慮した素材を取り寄せる際の運搬時の二酸化炭素排出量を考えると、シート貼りにする方が総合的にはベストだと考えました。
環境に配慮することは必ずしも環境配慮素材を選択すればいいということではなく、総合的な観点で判断が必要だと感じました。

白川
単に環境に配慮した素材を使えば良いということではなく、製造時や廃棄時といった使用前後にかかる環境コストも含めて、総合的に環境への影響を考慮して検討することが非常に重要だと感じます。
表面的なことに捉われるのではなく、本質的に環境負荷を下げるためには、普段当たり前に使用しているものを環境配慮型の素材に置き換えていくことが必要ですね。

ーでは、環境配慮型イベントの前例が少ない中で、今回博展が発揮できた強みは何だったのでしょう?

白川
提案からイベントの実施まで非常に短い時間の中で、デザイン、プロトタイプの試作、検証というサイクルを回せたことは、クリエイティブから制作までの全ての機能を備えている博展ならでは強みを発揮できたポイントだと思います。

また、サステナブル・ブランド国際会議の主催を行っていることも1つの要因です。
サステナブル・ブランド国際会議を環境負荷の低いサステナブルなイベントとして開催するために、様々な実験やチャレンジを行ってきたことがノウハウの蓄積に繋がり、今回のプロジェクトの実現にも繋がっていると思います。

<サステナブル・ブランド国際会議2021の様子>

橋本
やはり本社近くの辰巳(東京都 江東区)に実験・検証ができる、博展の制作スタジオ「T-BASE」があることは、博展の大きな強みですね。
実際にクライアントがT-BASEに来てくださり、制作過程を見ながら一緒に検討していくことができるので良かったです。

<T-BASE(辰巳)では、様々な実験・検証を行っています。>

ーたしかに、実験できる環境が整っているのは博展の大きな特徴ですよね。
アンバサダーとしての活動は今回の案件にどのように影響しましたか?

橋本
私はサステナビリティ・アンバサダーでの活動が役に立ったなと感じています。
例えば、今回全ての什器で接着剤を使用しないことを徹底したのですが、活動の一環としてイベントから出るごみを全て分別した際に、接着剤が少しでも付着していると資源として再利用できないと学んだことが活きましたね。

他にも、ナカダイさんのモノ:ファクトリーを見学したことで、マテリアルへの興味関心が高まり、新素材に対する知見をある程度有していたことも非常に良かったです。

◀左画像
博展でイベントから出るごみの分別をした様子

白川
最初にプロジェクトの相談をもらったときに、異素材の接着はなるべく避けようという話をしていましたが、新しい方法を模索しながらここまで接着剤未使用を徹底できたのは、2人の努力の賜物ですね。
一目では分からない部分にもこだわって、環境への影響を考慮しているところに感心をしました。

藤原
接着剤を使わないと、どうしても制作の際に手数が増えてしまうという点でまだ課題は残っています。ですが、現段階では実験的に色々な素材を試してみることが必要だと感じているので、今回のプロジェクトは、博展が担当するイベントでのサステナビリティを推進するために良い経験になりましたね。

橋本
今回、プロダクトマネジメントや制作担当の社内メンバーにも協力してもらい、全員で環境への影響を念頭に置きながらプロジェクトを進行できた点は非常に良かったです。社内外どちらのミーティングでも、企画書や図面をすべてデータで共有し紙の出力を極力避けたり、施工の際にでたモノの分別を綿密に行い、資源として再利用できるようにしたり、細かい部分でも気を抜かずに活動することができました。
アンバサダーとしてプロジェクトに関わるメンバーの意識を改革できたと感じています!

今回クライアントからも大変ご好評で、うれしいお言葉をいただきました。

<Bioworks株式会社さまから頂いたコメント>

「NEXT ESSENTIAL STORE」としてのPOP UP SHOP出店は今回が初めてで、どのように売り場を表現をすべきか試行錯誤をしている最中に、博展様へ施工のご相談、依頼をさせて頂きました。 
「商品の訴求だけでなく、来店者が環境課題について考えるきっかけになるような場所にしたい」という弊社の想いに対し、短い期間の中、プロジェクトを納品までリードしていただいた橋本様、想いをくみ取ってコンセプトからデザインまで、具現化していただいた藤原様、その他すべての制作にかかわって頂いた博展スタッフのみなさまのおかげで想像以上のクオリティで売り場が完成しました。 
マルイ様からもお褒めの言葉を頂きましたし、お客様からも「サステナブルな商品を探しててパッと見かけて入りました」や、「この素材から、こんな商品が出来るんですね」といった声をかけていただき、きちんとコンセプトが伝わった売り場になったことを実感しました。 
今後、制作頂いた什器は再利用して何度も使用する予定で、最終的に破損等で使えなくなった際にどうするか、といったところまで博展様にもご相談させて頂きながら考えていきたいと思います。 この度はありがとうございました。


ー1年間の任期が終わる前に、社外のプロジェクトとしてアンバサダーの活動がカタチになっているのは本当にすごいことだと思います。

では最後に、サステナビリティ・アンバサダーとして、イベント業界のサステナビリティを推進するための今後の展望を教えてください。

橋本
今後は「環境に配慮したイベント」が当たり前になればいいなと思っています。
今回のような事例が増えていくと、自然とサステナビリティが特別なことではなくなるのではないでしょうか。

Bioworks様も、素敵だと思って何気なく手に取った商品が環境に配慮している状態を作りたいとお話をされていました。これからも環境配慮型イベントの事例を増やし、博展のサステナビリティを推進していきたいです!

藤原
今回サステナビリティ・アンバサダーとしてこのイベントを納品できたのが嬉しかったです。
「地層」というコンセプトを掲げ、単に環境配慮型の素材を使用するだけでなく、環境課題について店来店者に問題意識を持ってもらうように設計できたことは、体験デザインを謳う博展らしさを体現できた気がして、よかったですね。

今後意識していきたいのは、クライアントとの目線を合わせることです。どのようなコンセプトにするのかはもちろん、どのような素材を使用するか、ディスカッションだけでなく検証や実験の場も、クライアントと一緒に活動ができたらいいなと考えています。

また、環境配慮型素材を使用するには、現状では多くの課題があることを学びました。
今後も最適解を見つけるべく、トライ&エラーを繰り返し、社内外様々な人を巻き込みながら活動していきたいですね。

白川
今回のプロジェクトでは、環境配慮型のポップアップショップ実現に向け、初めてのことが多い中、予算や安全性などの課題を解決するためにかなりの時間を要しました。
この学びやノウハウを会社としてしっかり蓄積し、他のメンバーが環境配慮型のイベントを実施する際に、迷わず進行できるような体勢を整えていきたいですね。

藤原
そういった面では、今回のプロジェクトも会期終了後に、どのように撤去されているのか、どのように再資源化できたのかを分析したいですね。
今回、制作した什器等は、Bioworks様が別の場所で再利用される予定になっていますが、もし何年後かに不要になった際に、どのように処理するかまで提案できるのが理想だと感じています。
今後も未来軸をもって、本当に環境にやさしいイベントとは何か、常に実験をしていきます!